中国京劇雑記帳

京劇 すごく面白い

鑑賞 尚派の名作 王艶が演じる京劇《乾坤福寿鏡》戯曲映画版

 

 四大名旦のひとり、尚小雲の代表作である京劇《乾坤福寿鏡》(《失子驚瘋》)の戯曲映画版です。舞台とはまた異なる表現でお楽しみいただけます。

 芝居が作り上げられた当時のすごさ、先人たちの偉大さの上に、時代が進んで現代の技術でまた新たに作られる素晴らしさに心が躍らされます。

 2017年の第31回中国電影金鶏奨最佳戯曲片を受賞。

 

京劇《乾坤福寿鏡》戯曲映画版 1時間52分59秒

 脚本改編・舞台演出:楊栄環 何永泉

 節回し設計:楊栄環 楊建

 再演演出:何永泉

 胡氏:王艶

 寿春:陳媛

 梅俊:趙華

 徐氏:張嬋玉

 梅心:韓慶

 林鶴:馬傑

 金眼豹:高航

 山婆:鄒海龍

 林弼顕:焦鵬飛

 趙半仙:竇鶱

 梅心:韓慶

 琴音:芮振起

 

 司鼓:丁勝 操琴:湯振剛

 

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 尚派はまさに「文戯武唱」。

 赤子が行方不明になって狂ってしまう演技(1:00:00~)。激しい動きに伴う鬼気迫る表情にぞっとしつつ、それを恐ろしく感じれば感じるほどその深い悲しみが心に刺さります。王艶の演技が素晴らしい。

 脚本は整理、改編されて物語が深みを増しています。

 山賊・金眼豹は村へ蒸し菓子を買いに行った寿春を待っている胡氏をかどわかそうと、寿春は持病の心の病で急逝したと嘘をつく場面(0:39:30~)。赤いズボンに緑の服を着た三十代の纏足の女だと言う金眼豹に、青色の服を着た持病はない纏足もしていない十七歳の少女だと突っぱねる胡氏。 

 「丑」が演じる金眼豹の妻・山婆はガサツな感じがするものの心根は実に優しく、「浄」が演じる迫力ある臉譜が施されている金眼豹を尻に敷いている姿が実にコミカル。「このわたしになにか文句があるのかい?!」とすごむ山婆に小さくなる金眼豹と従順する手下たち。厳しい境遇にありながらも救われる場面(0:45:16~)。

 また、林鶴が鉄面無私の「包拯」張りの清官で有能です。

 福寿鏡を返却するためとしてその存在を布告。持ち主として現われた寿春が連れてきた胡氏、梅俊と徐氏の二組。片やめでたく母子を引き合わせ(1:22:30~)、片や咎のある者たちをおびき出して罪を白日の下に晒して裁くというカタルシスを感じる展開になっています(1:34:54~)。

 こちらは英語の字幕があるので楽しみやすいかと思います。

 

 こちらは主演の王艶が舞台姿でうたう「彩唱」で尚派の代表作のひとつ京劇《双陽公主》の一節。このプログラムは実に秀逸なのでぜひどうぞ。