2024/02/10更新
「老生」の唱のなかでも有名で人気の一節をどうぞ。
京劇《甘露寺》。ものすごくざっくりですが解説を。舞台は三国志です。
呉の孫権の妹・孫尚香と劉備の縁談があると聞いて驚愕する孫権の母・呉国太。実は孫権の腹心・周瑜による計略で、荊州の地を渡すことに応じない劉備を誘い出すための口実でした。
孫権と呉国太、呉の元老・喬玄が甘露寺で一堂に会します。喬玄のふたりの娘はそれぞれ孫権の兄と周瑜に嫁いでおり姻戚関係にあります。喬玄は劉備の評判を伝えてこの婚姻を進めようと進言します。
「劉備は漢室の流れを汲む者。数々の武勇を誇る武将の関羽、張飛、趙雲、そして彼らを使いこなす諸葛亮を従える。我々が争えば曹操が漁夫の利を得るだけ、婚姻を結びましょう」という内容。
劉備は呉国太に気に入られて、めでたく孫尚香と華燭の典をあげることとなります。劉備はそのまま呉に留まり、穏やかで豊かな暮らしを送ります。人生の大半を苦しい戦乱の中に置いてきた劉備を骨抜きにする狙いが周瑜にありましたが、すべてを見越していた諸葛亮の献策により劉備は初心に戻って孫尚香と共に呉を後にします。
この一連の話は《甘露寺》《美人計》《回荊州》を併せて《龍鳳呈祥》という演目として、春節や国慶節などめでたい節目によく上演されるもののひとつです。さまざまな行当(役柄)が登場する「群戯」で楽しめます。
ご紹介するのは1991年の第九届春節聯歓晩会のもの。四人の役者による聯唱です。
馬長礼(1930-2016)[譚富英・馬連良の弟子、楊派(楊宝森)]当時61歳
辛宝達[高派(高慶奎)]当時44歳
耿其昌[余派(余叔岩)]当時44歳
言興朋[言派(言菊朋)]当時38歳
声が伸びやかで力がある、扮相(舞台姿)も美しい彩唱。それぞれの持ち味、芸風が味わえます。すごく貴重で希少な良いプログラム。特に言興朋。《曹操與楊修》の紹介もまた後々に。
CCTV戯曲
1991年第九届春節聯歓晩会より
[典蔵]京劇聯唱《甘露寺》喬玄 伴奏:北京軍区戦友京劇団
時間 俳優 唱詞
0:16 [馬長礼] 勧千歳殺字休出口
0:38 [辛宝達] 老臣啓主説従頭
0:55 [言興朋] 劉備本是靖王的後
1:24 [耿其昌] 漢帝玄孫一脉留
他有個二弟漢壽亭侯 青龍偃月神鬼皆愁
白馬坡 延津口 斬過顔良誅文丑
在古城曾斬過老蔡陽的頭
2:11[言興朋] 他三弟翼徳性情有 丈八蛇矛慣取咽喉
鞭打督郵気冲牛斗 虎牢関前三戦過呂温侯
在那当陽橋一声吼 喝断了橋梁水倒流
2:42 [辛宝達] 他四弟子龍常山将 盖世英雄冠九州
長坂坡救阿斗 殺得曹兵個個愁
2:55[馬長礼] 這一班虎将哪個有 還有諸葛用計謀
你殺劉備不要緊 他弟兄聞知是怎肯罷休
若是領兵来争斗 曹操坐把漁利収
我扭転回身奏太后 将計就計
3:27[全員] 結鸞儔