中国京劇雑記帳

京劇 すごく面白い

コラム 京劇ファンの熱狂…天津票友戯迷協会のみなさま

2023/11/12更新

 

 京劇の三大中心地のひとつ、天津。

 第一期、第二期と中国京劇優秀青年演員研究生班には天津の精鋭青年俳優が多くいます。かつての天津市の市長で(当時の)全国政治協商会議の李瑞環主席の京劇好きは有名です。

 

 

 北京にある全国政治協商会議本部の横「全国政協礼堂」で京劇の公演をすることがあります。全国政協礼堂は白亜の立派な建物で、天井が高く、床は赤い絨毯張り。招待などによる貸し切り状態で、出入り口では警備によるチケットと人物のチェックが入ることがあります。

 

全国政協礼堂のチケット

 中国京劇優秀青年演員研究生班の公演があったときのことです。

 開場を待って劇場の前にいると、ある主演俳優がコート姿で颯爽と歩いてくるのが目に入りました。俳優が正面玄関から舞台入りするのは別に珍しいことではありません。でも、彼が足を踏み入れようとすると警備に止められてしまいました。その途端、劇場前にたむろっていた人たちが一斉にワッと寄ってきて「〇〇だよ!あの〇〇!今日出るんだ。主役だよ!出ないと幕が上がらない。すごいんだよ!」と口々に説得。その間、楽器ケースを抱えた奏者と思しき人たちがやってきてどんどん人だかりが大きくなり、身分証のようなものを掲げてワイワイと…かくて皆、無事に楽屋入りできたのでした。

 この厚意の方々は、天津から駆けつけているのです。

 天津市青年京劇団がここで二週間ほど公演があったときは、連日周辺の道路に何台ものバスが並んでいました。車体には流れるような筆遣いで「天津」と。そう、天津の熱狂的戯迷たちは北京まで毎日貸切バスを繰り出して通っていたのです。彼らは皆、お揃いの白いTシャツを着用。その表と裏には「天津票友戯迷協会」との赤い文字が。

 客席を埋め尽くす白いTシャツの人々の「うおおおお!」という雄叫びの嵐。そのど真ん中の席でわたしはただひとり圧倒されていました。あの熱狂振りはすごく楽しく、ときどき思い出しては笑ってしまいます。

 

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