中国京劇雑記帳

京劇 すごく面白い

コラム 京劇の票友とは…好きを極める

2023/11/12更新

 

 中国語で芝居好きのことを「戯迷 xi mi 」、アマチュアで芝居を楽しむひとたちを「票友 piao you」といいます。

 アマチュアといっても自分の好きな一場面の一節をうたう人から、ひと芝居通しで全て演じきるプロ並みの人までいます。昔はプロ顔負けの票友に門下入りして名だたる俳優を生むことがありました。

 票友の中でも外国に渡った華僑となると、その規模たるやまるで「堂会 tang hui 」(政府高官やお金持ちなどが誕生会などで招く公演)。劇場貸し切り、共演相手は一流の役者と楽隊、招待客は梨園の長老の面々でその票友の師匠がいることもあります。

 師弟関係を結んで学ぶのにプロ・アマの垣根はありません。弟子は師が得意とする芝居や人物の解釈、芸風など、より高い次元のものを学びます。弟子は師を敬い、師は弟子を保護して共に流派を担っていきます。自分の芸の方向によっては複数の師を仰ぐ俳優もいます。

 そして票友が演じる芝居には今ではあまりお目にかかれなくなった渋い演目も多く、この芝居はこうだったのかと知らされることがあります。

 

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カナダから上海と北京で公演する票友や台湾から父子で北京公演する票友のパンフレット

 私が見てきた票友の公演の中で最高齢は79歳の台湾のお方。北京の人民劇場貸し切りで、芝居は名優・周信芳の代表的な演目《烏龍院》!しかも宋江役は上海京劇院の陳少雲!この難しい芝居を揃いに揃った舞台で全く臆することなく、ギャグやアドリブ満載で閻惜姣を実に可愛く演じていました。

 

 

 票友たちが集って練習したり、ノドを競ったりするところを「票房 piao fang 」といいます。公園で、京胡ひとつで楽しむものもあれば、国際的な大きいものまでさまざまであります。

 私も住んでいた地区の文化館の票房に通っていたことがあります。土曜日は授業、日曜日は発表会です。講師は戯曲学校や京劇院から招いた有名人揃い。かなり本格的で並々ならぬ熱気がありました。公民館のカルチャースクールというには少し趣が異なります。芝居を媒介に情報交換や交流の場として地域社会にしっかりと根付いていました。

 

 

 票友が技を競う大会も定期的に開かれています。国内の選りすぐりでレベルの高さを競うものもあれば、外国人が参加する国際的なものがあります。長安大戯院を一週間貸し切っての大掛かりな国際大会は、劇場がさながら巨大な票房と化しました。外国人がうたっているのをみて、自国の文化を誇りに思う中国人もいたことでしょう。